むかし小話

欅の音terraceの思い出

私たちが小さかった頃、“欅の音テラス”が立つこの場所には、大きな欅の木や背の高い杉の木が立ち並び、町の中の小さな森でした。太陽の日差しを木々が遮り、昼間でも中は薄暗く、よく探検をしたり虫を取ったりしたものです。

その小さな森の中に、祖母の代まで農業をナリワイとした私たちの家がありました。
庭のびわの木や柿の木に実がなると、木登りして取ったり、母屋やお蔵の瓦屋根に登ったり、おてんばな事をよくした思い出がこの場所にはあります。となりのトトロに出てくるような五右衛門風呂を日常の中で使っていましたし、 私たちの遊び場だった庭には手押しのポンプの井戸もありました。また、ペットとしてではなく、番犬として犬を飼っていました。昭和の風景・・懐かしい時代・・というと伝わりますでしょうか。

昔ながらと言われるその時代から、今では人も町も風景も、大きく変わりました。

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入居者の方と大家のつながり。町とのつながり。

祖母の代でアパートを建て、そこに住まわれる方々と日常的な交流が生まれました。お家賃の受け取りであったり、回覧板の受け渡しであったりと、なにげなく顔を合わすことが多かったので、挨拶やおしゃべりでお互いの雰囲気を知っていく、話していく、そういった不思議なあたたかい関係がありました。

時代は変わり、お互いが顔を合わせて話をする機会は減ってきています。それが悪いとは言いませんが、新しい地域に住まれる方々と元から住んでいる人、元からある地域の文化、大切なものを伝える・繋げることが難しくならないでしょうか。地元に根付く文化や風土、そういった大切なものを橋渡しする役割が大家にはあり、ただ住み場や建物を用意する役割だけではなく、人と地域とナリワイの空間を繋ぐ、巡り会う機会を作る、そのような存在でありたいと思っています。

そして、町のあちこちに点在する建物を同じ考えに沿って改修することで、住まれる方々が互いに、地域に繋がっていく・・・それが町並みを整え、美しい景観を生み出すことにも繋がると信じています。

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愛着を持てる空間へ育てる

共同住宅は、ナリワイを持つ方にこそ住んでもらいたい、そう思います。

かつての町家のように、隣り合う家同士が、同じ場所でナリワイを行う・・・仲間のいる安心感。共同で使える水場や広場があることの豊かさ。だからこそ、自分の家のように愛着の持てる空間にして行きたいと思っております。

土や草木に触れる畑があったり、みんなで作った料理を美味しく頬張る場所があったり、水の音が聞こえる水舟があったり、マルシェのできる木陰のある広いオープンテラスがあったり。

そんな場を、住まれる方と大家とみんなで維持管理し、楽しく、暮らしやすく、昔からの良さに現代のナリワイを加えた新しいナリワイの空間を共に育てて行きたいと思います。

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入居される方へのメッセージ

この度、縁あって、古き物や語り継ぎたい想いを大切に考えて下さる設計会社さんたちと出会い、ナリワイをコンセプトとした“町家スタイル”の建物へのリノベーションを行う事となりました。モノ作りやワークショップの場が身近にあり、住む方達が協力して作り出すコミュニティに期待する今回のプロジェクトが、どのようなモノを紡いでいくのか・・・
これから夢に向かってナリワイをする方々と、共に成長する気持ちで見守って行きたいと思っております。

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